在宅教育(home education)の反発

ホームエデュケーション(英:home education、米:homeschooling)がここ数日ニュースのトピックにあがってます。いままでは自由度が高かったホームエデュケーションですが、その登録を義務化する動きが持ち上がっているのに、home educating を実行している親たちが反発しているものです。

イギリスでは、現在2万~8万人もの義務教育対象年齢にあたるこどもが家で教育されているといわれています。この数字の大きな開きは、イギリス在宅教育の無監督さの反映。
義務教育期間中に学校教育を中断して在宅教育に切り替えた場合は登録が必要ですが、そもそも学校に入学しなかったケースでは届出が不要なため、正確な数が把握できない状況となっているのです。

家庭での教育を選択する理由は様ざま ― イジメ・不登校・宗教・文化・特別ニーズなど。
「志望校に入れなかったから、空きができるまで待っている」
というひとも。

イギリスでは、1996年教育法 (Education Act 1996) の compulsory education(義務教育)に記されている『親の、義務教育年齢のこどもに教育を確保する義務』に

either by regular attendance at school or otherwise

とあって、ホームエデュケーションが 明確に合法 なため、『学校に行かせない』が選択肢のひとつとしてあるんですね。

さて、今回政府がこの登録制への見直しを提唱したのは
「主に親へのサポートを提供するため」

…とは表向きの理由。
実際には、ホームエデュケーションが 児童虐待の隠れ蓑/温床 になっているとの懸念から、モニターの必要性が NSPCC (National Society for the Prevention of Cruelty to Children:英国児童虐待防止協会) など子どもたちの保護を専門にする団体から叫ばれていたんです。

こどもが虐待された末に死亡してしまうケースが近年いくつかメディアで報道されたことも、この動きを後押ししたのかと。

今回のこの見直し案で導入が検討されている主な点は:

  • 所轄の役所によるサポート提供の充実
  • ホームエデュケーションの1年毎の登録義務化
  • 登録毎にその後12ヶ月の取り組み方や目標などを明記した計画書提出の親への要請
  • 所轄役所の検査官による立ち入り検査(最低2週間前通知のうえ、子ども本人との面会と、計画書目標の達成度の確認、そして最後に検査官による報告書の作成と該当家族へのそれの提示)
  • 子どもの安全が疑問視されるに足る明確な根拠がある場合の、所轄役所の在宅教育登録申請の受付拒否
    参考サイト:DCSF (Department for Children, Schools and Families:児童・学校・家庭省)

義務教育期間中はある程度モニターの必要性は否定できないと思いますが、いままでの 野放し状態 自由度の高さを当然の権利として享受してきたイギリスの親に、ここまで抜本的な改革を受け入れされるのは容易ではなさそう。

とある在宅教育家庭の母親と子どもへのインタビューも見ましたが、

「紙ベースでの教育をしているわけではないので、
在宅教育の証拠を求められても困る」

旨話しているとともに、児童虐待の疑いをかけられたうえ監視下におかれ、国家機関が家庭での事柄に介入する事にたいへん憤慨していました。

日本ならともかく、個人主義が浸透しているイギリスで徹底させるのは難しそうだなあ。

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